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日別アーカイブ: 2025年4月15日

第9回法面工事雑学講座

皆さんこんにちは!

プロス工業株式会社、更新担当の中西です。

 

さて今回は

~確認事項~

ということで、法面工事において施工前に必ず確認すべき事前事項を、6つの視点から深く解説します。

 

安定・安全・環境に配慮した施工のために“工事前に見るべきこと”

山間部の道路工事、宅地造成、河川護岸などで欠かせない法面工事
斜面の崩落を防ぎ、周辺の構造物や人命を守るという重要な役割を担っています。

しかしその反面、地形・気象・土質などの自然条件に大きく影響される特殊な工事であり、現場条件の把握不足や確認漏れがあると、崩壊リスク・工事遅延・安全事故に直結する可能性があります。


✅ 地形・地質・自然条件の確認

見た目だけで判断しない“足元”のリスク把握

◯ 1. 地形の把握

法面の傾斜角、長さ、高さを正確に測定・確認し、
「自然斜面か人工斜面か」「旧地すべり地形か」などの地形分類を行います。

◯ 2. 地質・土質の確認

  • 崩壊の恐れがある風化岩・粘性土・シルト層の存在

  • 湧水・地下水の有無

  • 地すべりや亀裂の痕跡

地質調査(ボーリング・表面波探査・簡易貫入試験など)を実施し、法面の安定性を数値的に把握することが最優先です。


施工方法の適正判断

現場条件に合った“工法選定”ができているか

法面工事では、設計に応じてさまざまな工法が使い分けられます。

✅ 主な法面工法の種類と適用条件

工法 特徴・用途
吹付法枠工(モルタル/コンクリート) 軟弱地盤・急傾斜への対応、構造物保護
植生工(種子吹付・客土吹付) 景観配慮・自然回復を重視する現場
アンカー工 地すべり地・すべり面の安定化
法面張ブロック・石積み 道路法面・河川堤防などの補強
ロックボルト・鉄筋挿入工 岩盤の割れ目補強や高所斜面に対応

傾斜角度、土質、気象条件によって適した工法は大きく変わるため、現地確認を踏まえた再評価が必要です。


設計図・工事数量・発注図の整合性確認

図面通りに施工できるか?現場条件とのズレはないか?

施工前に、必ず次の項目を確認・すり合わせておく必要があります:

  • 設計図面上の法面形状と実地形状の一致

  • 法面延長・面積の実測確認(施工数量に直結)

  • 仮設構台・重機配置スペースの有無

  • 支障物(樹木・電柱・既設構造物など)の確認

計算上の設計と現場の地形・寸法にズレがある場合、施工数量の変更や設計変更が必要になる可能性があります。


安全対策・作業計画の確認

 高所作業・重機作業を伴う現場の“命を守る設計”

法面工事は、高所・不安定な足場での作業が多いため、事前の安全計画が非常に重要です。

✅ 確認事項

  • 作業構台・足場・防護柵の設計

  • 重機・資材の搬入経路、仮設道路の確保

  • 施工中の落石防止措置(防護ネット・覆工)

  • 作業員の墜落防止対策(安全帯・命綱・立入制限)

国土交通省の「法面工事における安全施工マニュアル」などを参照し、法令遵守+現場実態に即した対策を講じることが求められます。


周辺環境・近隣住民への配慮

 騒音・振動・景観・生活動線への影響を見落とさない

法面工事の現場は、住宅地・公道・農地・河川沿いなど、生活空間に近い場所にあるケースが多いです。

✅ 環境配慮として確認すべき点:

  • 重機音・発破・切土による騒音振動対策

  • 粉じん飛散防止(散水・ネット)

  • 作業時間・搬入ルートの近隣説明

  • 伐採・除草による景観変化の対応

  • 植生復元・緑化工によるエコ対策設計

施工前の近隣説明会や掲示板設置、現場案内板の整備は、トラブル回避のために重要です。


関係機関との調整・届出

法令・許可手続きが未完だと、工事は始められない

✅ 必要な申請・調整事項(例)

届出・許可 提出先・対象
開発許可 自治体(造成規模により)
林地開発・伐採許可 県庁・市町村(森林法)
占用許可(道路・河川) 道路管理者・河川管理者
地すべり防止区域指定 都道府県(土砂災害防止法)
工事届(労働安全法) 労基署(高所作業含む)

書類に不備があると着工が遅れるだけでなく、法令違反として指導・中止命令の対象にもなります。


✅ 法面工事の9割は「事前準備」で決まる

法面工事は、見た目よりずっと“奥が深く、難しい”工種です。
だからこそ、施工に入る前の段階で、「何を、どこまで、誰と確認すべきか」を明確にしておくことが、
現場をスムーズに、安全に、そして高品質に進める最大のカギになります。


事前確認チェックリスト(法面工事版)

カテゴリ 確認事項
地形・地質 斜面の角度、土質、地下水の有無
工法選定 適用条件と設計との整合性
設計情報 図面・施工数量・支障物の確認
安全対策 足場、落下防止、高所作業対応
環境・近隣 騒音、振動、景観、通行への影響
許認可 関係機関の調整・届出・承認状況